第一章 ある魔法使いの入学式

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おじさんと喋って結構息抜きになったし、さっさと夜食を片付けて課題に取り組もう。 なんたって、入学式は…………明日だもんなあ。 朝。 まだ朝靄が掛かり、何となくひんやりと感じる空気を吸い込み、吐く。 これだけの動作が凄まじくだるい。 結論から言おう、寝てない。 昨日は丸一日部屋に引きこもり机とにらめっこしていたのだが、結局夜が明けるまで終わらなかった。 今日は昼から学園の入学式の為、朝早くからこの町を出なければならなかったので、寝る暇が無かった。 「終わった……」と床に倒れたのは良いが、次の瞬間にはまたも扉を蹴って現れたおじさんに叩き起こされる始末だ。 ……まあ、休み中遊び呆けていた俺が悪いのだが。 「眠そうな顔してんな……お前等」 「うぅ……課題……課題があぁ~」 「落ち着けミーア、もう課題は終わった。終わったんだ……」 隣でゾンビの様になっている幼なじみが、課題の幻影に苦しめられている。 学園へはミーアと一緒に、おじさんが借りた馬車で行く事になっていた。 なので今この場には、見送りの為にミーアの父さん、母さんのキースおじさんにミリアおばさん、後俺の家族が集まっている。 「……我が子ながら情けない」 「ほらミーア! せっかくの制服でしょ? しゃんとしなさい!!」 「わかった~……」 ミーアから洩れる気の抜けた返事。どうやらこいつも俺と同じ徹夜組らしい。 同志よ。 「ほら、もう時間よ。馬車に乗りなさい、遅れちゃうわ」 「アレクもミーアちゃんも、頑張れよ」 「うっす……」 「はい……おじさん、おばさん」 我が両親の激励の言葉に何とか一言だけ返事をする。 のそのそと動き、既に荷物を積み込んでいる馬車へと乗り込む。 「ハハハ、今から新しい門出に向かう顔じゃねぇな」
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