第一章 ある魔法使いの入学式

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可笑しそうにケラケラ笑うおじさんが、「頑張れ」と俺とミーアの頭を撫でた。 普段なら俺は恥ずかしいので抵抗するのだが、今はひたすら眠くて抗う気力が起きない。 「ジンおじさん……馬車ありがとう……」 「いやいや、気にすんな。独り身で趣味も無ぇから金余ってんだよ」 むにゃむにゃと眠そうに頭を下げるミーアに、照れ笑いしながらそう言ったおじさん。 別に今のは昨日の事を引きずって言った訳では無さそうだ。 「それじゃ……行ってきます」 「行ってきます……!」 「「「行ってらっしゃい!」」」 学園は全寮制。 家族ともこれで暫しのお別れだ。 馬車の扉を閉めた後も、ガラス越しに手を降ってくる父さんや母さん、そしておじさんを見てそんな事を考えた。 お互いが見えなくなるまで手を振り続け、ふぅ、とため息を一つ吐く。 そして、隣に座っている幼なじみの顔を覗き込み、こいつが俺と同じ事を考えていることに気がついた。 「……ミーア」 「……アレク」 「「おやすみ」」 目を閉じると共に遠のく意識。 俺とミーアは、失った睡眠時間を取り戻す様に眠りについた。 ガタンッ! 「うぉ!?」 突如響いた衝撃に、夢の世界から無理矢理引き戻される。 寝惚けた頭で暫く思考し、馬車の車輪が石でも踏んだのだろうと結論付けた。 ちらりと横を見てみると、ミーアはまだ寝ていた。 いい夢でも見ているのか、時折顔がにやけている。 ……よく笑うやつだとは思っていたが、寝顔までにやけているとは思ってなかった。 あまり人の寝顔をまじまじと見るのは良い趣味とは言い難いので、俺は視線を窓の外へと向ける事にした。 ガラスの向こうに見えて来たのは、所々に見張り塔が作られている大きな純白の外壁。 どうやら、調度良いタイミングで起きた様だ。
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