660人が本棚に入れています
本棚に追加
数分後、馬車の速度が徐々に落ちて行き、静かに停止した。
恐らく、運転手の人が門番に通行証を見せているのであろう。
程無くして、また馬車が動き出した。
普段なら門を開けなければ行けないのでまだ時間が掛かるのだろうが、今日は学園の入学式だ。
各地からこうして馬車で向かってくる奴が大半だから、学園の卒業式と入学式がある日は午前中に限って門が開けっ放し。
無用心かも知れないが、代わりにこの日は街中を城お抱えの兵士達が闊歩する。
ただでさえ犯罪の少ないこの『王都』で、更に犯罪率が低下するんだとか。
……さて、王都に入ったって事は学園にもうそろそろ着くな。
男の俺は別に良いが、女のミーアは寝起きを人に見られたくは無いだろう。
今の内に起こしとくか。
「おーい、ミーア。起きろ─」
「……う~ん、まだ眠い」
「もう直ぐ学園に着くぞー」
「……本当? ……じゃあ、起きなきゃ」
寝惚け眼を擦りながら小さなあくびをするミーア。唸りながら伸びをすると、「あ」と何かを思い出した様に呟き俺に顔を向けた。
「寝顔、見た?」
「……起こす時は見えるだろ」
にやけてました……とは言わない方が良い筈だ。
「今の間は嘘だなこんにゃろう」
……こいつ嘘発見器か? 何故バレたし。
「すまん。起きた時にちょっと見た」
「どうだった?」
どうだったて……バレたしもういいか?
「にやけてた」
「嘘!? ……不覚」
頭を抱えガクリと項垂れたミーア見て、正直に喋った事を少し後悔する。
やべ……やっぱ黙ってた方が良かったか?
幼なじみと言えど、さすがに恥ずかし
「……ま、いーか。アレクだし」
おじさん、今俺がこいつから異性として見られて無い事が確定いたしました。
最初のコメントを投稿しよう!