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どこに行っても薄暗いこの城の中、この大広間だけは強い光で照らされていた。
その大広間に響くのは、研ぎ澄まされた剣と剣がぶつかり合う金属音。
それと──
「うおぉぉぉぉぉぉッ!!!!」
この空間にこだまする、俺の咆哮。
「…………」
「がッ! はぁ、はぁ……」
咆哮と共に放った俺の全身全霊の一撃は奴に簡単に防がれ、動きを止めてしまった俺の腹に強烈な蹴りが直撃した。
吹き飛ばされるも何とか着地に成功するが、蹴りの衝撃で空気が体から出てしまい、思わず片膝を床の石畳に着ける。
……おい、嘘だろ。
「ふぅ……つまらんなぁ……」
何なんだよ! この力の差はッ……!!
「お前と戦う日を楽しみに楽しみにしていたというのに……拍子抜けだ」
奴が、心底つまらなそうに溜め息を吐いた。
その本物の闇と見間違える程の漆黒の瞳が語っているのは、失望。
その視線に、自分自身の不甲斐なさに怒りが沸き上がり、俺は奥歯を噛み締めた。
……何してんだよ俺はッ!!
ここで負けたら、今までやってきた事が全部無駄になるだろうが!!
俺をここまで支えてくれた仲間に、何て言い訳する気だよ!!
「……そんなに睨まれてもなあ。もう、お前に興味は無い」
俺が怒気を含んだ視線を奴にぶつけても、奴は俺をそこらに落ちている石ころを見る様な目で見つめ返してくる。
「思考の邪魔だ、見つめるな。今どうやってお前を殺そうか考えている」
ッ!! こいつは……どこまでもォ……!!
「ふざけるなァ───ッ!!!」
「……ふざけてなどいないのだが」
怒りの余り手のひらが白くなる程剣を握り締め飛び掛かり、上段から降り下ろした俺の剣を、奴は顎に手を当て考え事をしながら半身で避けた。
「オラァァァァァッ!!!!」
「ふむ……迷うな……」
360度、全方向から絶え間無く襲う俺の剣技は掠りもせず、奴の思考を中断させる事すら出来ない。
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