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紙に書かれている文章か何かを全て読み終え、顔を上げた先生の眉間には何故か皺が寄っていた。
そして、何かを批難する様な視線をどこかに向けている。
それが気になり、視線を辿る。
辿った先に佇んでいたのは、白髪の紳士的な雰囲気のお爺さん……ノーザン理事長だった。
……何で理事長を批難してるんだ?
この疑問が俺の頭に浮かんだ時、何かに納得がいっていない様子の女の先生が……一つの言葉を紡ぎだした。
「……たった今、特別学級の人員を変更するよう指示が届きました」
人員の変更……?
ざわざわと生徒達の間に波紋が広がって行く。
先ほど悔しがっていた生徒達は、またチャンスが巡って来たと。
特別学級の生徒は、自分が選ばれるかも知れないと言う緊張感に襲われた。
そのどちらでもない生徒達も、特別学級の人員の変更と言う恐らく前代未聞の事態に驚き、少なからず動揺している。
「静かに!」
ざわついた生徒達を静める為に、女の先生の一喝が飛んだ。
それを聞いた生徒は一斉に開いていた口を閉じ、この場が一気に静まり返る。
それを確認した先生が一呼吸おき、神妙な面持ちで紙に書かれている内容を読み上げた。
「特別学級から、出席番号四十番、オズ・オブライエンを外し……代わりに──」
オズ・オブライエンの名前が出た事で生徒達が少しざわつき、代わりの人物の名前が出ようとした事で直ぐに静まった。
この場にいる人全てが先生の言葉を一字一句聞き逃すまいと集中し、壇上の先生を凝視している。
そして今、先生の口がゆっくりと開き、ある生徒の名前を告げた。
「──アレックス・ファイレックを、特別学級の生徒として迎え入れる!」
それは、ひどく聞き慣れた名だった。
周り奴らが誰だ誰だとざわつく中、隣にいるミーアの見開かれた眼が俺を見ている。
アレックス・ファイレック。
それは、紛れもなく……俺の名前だった。
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