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この国の城とほぼ同じ建坪の校舎内のとある場所に、その扉は佇んでいた。
何故か重苦しい雰囲気を放つその扉には、所々に高級感のある装飾が施されている。
調度目の高さに取り付けられている長方形のプレートには“理事長室”と彫り込んであった。
……ここか。
その扉の前に立ち、コンコンとノックをする。
俺がこの理事長室を訪れた理由は、俺の特別学級入りを取り消して貰う為だ。
あの後、普通学級のクラス分けが発表され各自の教室に向かう事になった。
「何で!? 何で!?」と騒いでいたミーアともそこで別れ、ぼーっと突っ立っている訳にもいかない俺は取り敢えず、特別学級の教室へと向かう事にした。
その教室で晒された奇異の視線。
担任として現れた、壇上でクラス分けの指示を行っていた女の先生から聞かされた特別学級の授業内容。
とてもじゃないが常人の俺が堪えられるレベルの物では無かった。
なので、女の先生に理事長室の場所を聞き、寮に荷物も置かずにこうして直談判に赴いたのだ。
「どうぞ」
ノックから一拍間を置き、扉の向こうから入学式で聞いた理事長の声と同じ物が聞こえてきた。
「失礼します」
言い切ってから扉を開けると、応接の為のソファーにテーブル、資料か何かが入った大きな本棚に、歴代の理事長の肖像画、最後に扉から正面奥に置いてある大きなデスク。
必要最低限の物しか置かれていない、理事長室の風景が俺の目に写った。
「何か用でも? ファイレック君」
ノーザン理事長はデスクで書類を眺めていた顔を上げると、俺の眼を見てそう言った。
相変わらずの不思議な瞳に一瞬視線を反らしそうになるが、しっかりとノーザン理事長の眼を見て返答する。
「俺を、特別学級から抜けさせてください」
「……おやおや」
俺が真剣な表情でそう言うと、ノーザン理事長が困った様に顔を歪めた。
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