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ふと、奴の体から魔力が発せられているのを感じた。
しかし、奴から攻撃する気配は感じられない。
「ん? ……ほう。なるほど、なるほど」
……通信魔法か。
奴の言動で、奴から感じた魔力の正体が“通信魔法”であることが分かった。
大方、部下の魔族から何らかの連絡が入って来たのだろう。
……今がチャンスだ。
「ハァァァァァァァッ!!!」
気合いの雄叫びと共に剣の手数を増やした。
通信魔法中ならば、奴の気も多少は散るはずだ。
……俺は絶対に勝たなければならない。
今俺の双肩には、世界中の人々の想いが背負われているのだから。
それに──
『約束……必ず帰って来て……』
俺は……帰らなきゃいけないんだ!!!
避けられるのなら当たるまで打ち込め!!
速度を上げろ!! 無駄を無くせ!!
限界から更にスピードを引き上げた連撃が、残像を残しながら奴に迫る。
斬撃の壁。
逃げ場など……何処にも無い……!
「……決めたぞ」
ゾワッ!
この状況で奴が浮かべたのは、笑み。
口角がつり上がり、目はにやけ、これ以上無い程の邪悪な笑みをそれはそれは楽しそうに浮かべた奴は、俺の剣を受けようとも避けようともせず……。
ただ、一言。
「お前は、絶望のドン底に落として殺してやるとしよう」
何……ぁがァ!!?
ガン!! と背中を打ち付け、跳ねる。
もう一度打ち付け、ザザザっと床を滑りようやく止まった。
俺の手から離れた剣は、手を伸ばせば届く程の所へ落ち、硬い床で金属音を奏でる。
何……だ、今……何をされた……!?
ダメージを受け震える手足に鞭を打ち、剣を拾い上げ何とか立ち上がった。
「ほらどうした。打って来い」
……駄目だ、挑発に乗るな。
次、真正面から行ったら確実に殺される。
考えろ。考えるんだ。
どうしたら奴に勝てる?
どうやったら奴に攻撃を当てられる?
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