プロローグ

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「どうした? 来ないのか? ……まあいい。ならばその気にさせるとしよう」 奴はニタニタとした笑みを止めようとはせず、まるで新しい玩具でどう遊ぼうか考えている子供の様な視線で俺を見下していた。 くッ! ……だが、この傲慢に付け入る隙があるはず。 奴が油断している今の内に……。 「お前は……ここに来る途中に我が同胞に囲まれたらしいな。そこで、同胞とお前の仲間が戦い、お前を先に行かせたらしいが……」 「それが……ぐっ……どうした……! カリンとグレンなら、あの程度の魔族の群れ……」 「その……くくくっ! カリンとグレンとか言う魔法使いと戦士だがな? ……たった今死んだと連絡が入った」 ……死ん……だ? 奴の口から放たれ、俺の鼓膜を揺らした一つの単語。 死。 その言葉を俺が理解した時、頭が真っ白になった。 戦場では、致命的な隙。 しかし奴は俺に手を加えようとはせず、顔に浮かべた笑みをより一層濃いものにしながら、また楽しそうに語り出した。 「どうやら魔法使いの方は怪我を負っていたらしいな。仲間に心配を掛けないよう黙っていた様だ。くっくっ、健気じゃあないか」 「……お前の妄言に……誰が騙されるか!!」 「ん? 信じたく無いのか? 何なら、仲間の死に様を語ってやろうか? 報告してきた同胞は中々気が利く奴でな。どうやって苦しめ、殺したかを事細かに説明してきたのだ」 「黙れ……黙れェェ───ッ!!!!」 分かってはいた。 戦う以上、仲間が死ぬ可能性があるって事は。 「あァァァァッ!!!」 「男の方は……怪我で動けなくなった魔法使いを庇って四肢を裂かれたそうだ。動けぬ達磨状態で、しばらく生かされたらしい」 だが……アイツらなら。 アイツらなら、どんなことがあっても死なないと……心の奥で信じていた。
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