第三章 ある魔法使いは卑怯者

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「……あ」 目が覚めると、目の前に見知った天井が広がっていた。 この学園に来てから幾度と無くお世話になっている、保健室の天井だ。 模擬戦闘……実技の授業の後、ここで寝ていると言うことは……。 俺は、負けてしまったのか。 ……と言うことは、あれは夢だな。俺がアルフレッドを後一歩と言うところまで追い詰めるなんて、有り得ない。 どこからが夢だったか何て分かりきってる。俺の頭に、変な文字が浮かび上がったところからだろう。 最初の魔法を受けて、全身を強打し気絶。 これが妥当なところか。 「……ようやく気がついたか。制服は、そこに掛かってるぞ」 木製のベッドから上半身を起こすと、この保健室の主であるバーコル先生が話し掛けて来た。 俺が卑怯者と言うことは先生の間でも広がっているため、他の保健室の先生は俺が来ると嫌な顔をしてくるのだが、バーコル先生だけは何も言わず普通に治療してくれるので、いい先生ではあると思う。 しかし、切れ長の鋭い目付きと、あまり積極的に喋る方では無い事が災いしてか、生徒に恐がられているらしい。 喋ってみると中々面白い先生だし、結構な美人なのだが……勿体無い。 まあ、他の生徒が来ない方が気楽なので俺は助かっているのだが。 「ありがとうございます」 「ああ……それにしても、今回は無事に済んだ見たいじゃないか。外傷無し、魔力切れで気絶しただけだ。良く頑張ったな」 「ちょっ、バーコル先生、恥ずかしいですって」 白衣のポケットに片手を突っ込み、もう一方の手で頭を撫でて来たバーコル先生。 ……誉められたの何て、久しぶりだな。 ──ッ!! 「せ、先生! 今何て言いましたか!?」 「お、大声出すなよ急に……良く頑張ったなって……誉める方も恥ずかしいんだぞ」 「違います! 俺、何で保健室に運ばれたんですか!?」
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