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有り得ない。きっと聞き間違いだ。だって俺は──
「……お前は、“魔力切れ”で気絶したからここに運ばれて来たんだ」
──魔法何て、一発も使っていないのだから。
どういう事だ? 俺は何も出来ないままやられたんじゃ無かったのか?
……本当に、俺が魔力切れで倒れたのならば……あれは、あの夢は……。
夢じゃ無かった……?
「どうした? 急に黙り込んで」
バーコル先生の心配そうな声が聞こえたが、それに反応見せる程の余裕が俺の頭には無かった。
あの文字は夢じゃ無かったのか? あの金色の炎は、あの圧倒的な力は、あの追い詰めたアルフレッドの姿は……?
もし、もしもだ。
あれが全部現実で起こった事だとすると、あの力は俺の中に眠っていると言うことだ。
それなら、あの力を“意のまま”に扱える様になれたら……?
変わる。
変わるはずだ。今の現状が、理不尽な現実が、無慈悲な苦しみが。
希望が見えた。真っ暗闇を突き抜ける、聖なる光が現れたのだ。
「おーい、ファイレック。大丈夫かー?」
ペチペチと頬に響く衝撃を受けて、ようやく俺の意識は目の前の現実に引き戻された。
「バーコル先生、俺部屋に戻ります」
「おい、ちょ」
ベッドから起き上がろうと体を動かすと、両肩を何やら押さえつけられ……。
「寝てろけが人!」
「うわ!」
ベッドに無理やり押し倒された。
俺、貞操の危機。
「魔力切れてるって言ってるだろうが。無理に動くな、今日は寝てろ。いいな?」
「……はい」
恐さに定評のあるバーコル先生に顔の近くで睨まれたら、ドキドキする前にビクビクしてしまう。
大人しく返事をした俺に、「よろしい」と一言洩らしたバーコル先生は、いつもの机に戻り書類を片付け始めた。
バーコル先生の言う通り、確かに疲れていた俺は直ぐに襲って来た睡魔に負け、重くなった瞼を閉じる。
俺は、学園に入ってから初めて心地好い眠りについた。
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