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「…………は?」
理解、出来ない。
何故彼女が……ミリアーナが死んでいる?
何故だ、どうして?
「お、動きが止まったな。なら……次はこれだ」
ミリアーナの映像が霞み、途切れた瞬間、煙を上げる城の映像が流れ出した。
その国の城下町から人々の悲鳴が、断末魔が響き渡っている。
また映像が切り替わった。
今度は別の国の別の城。
しかし、人々が魔族に襲われているのは先程の映像と変わり無かった。
その後、数度映像が切り替わるが……その全ての国々が魔族からの襲撃を受けていた。
「この大陸に来ていたのが、我々だけとでも思っていたのか? ハーハッハッハッ!! 我々の大陸にはまだまだ同胞が存在する!! 最初からお前ら人間に勝ち目など無かったのだよ!!」
意図せずして、身体中から力が抜け、剣を手から取りこぼす。
俺は糸の切れた操り人形の様に、石畳に両膝を着いて項垂れた。
頭の中でぐるぐると同じ言葉だけが渦を巻く。
守れなかった。
守るべき物を、守らなければいけなかった物を。
何一つ。
全て、壊された。
「…………畜生」
──俺にもっと力があれば。
「……畜生ォ」
──何かが、変わったのか?
「くくくくっ! 泣くなよみっともない。いやいや、礼を言う。思っていたよりも楽しめた」
奴の言葉が、ぼんやりとしか頭に入って来ない。
「それじゃあ、お別れだ。英雄───よ」
奴の手のひらが俺に翳される。そこからは、今まで感じた事の無い異質のおぞましい魔力が感じられた。
「もし来世と言うものがあったとして、そこでまるで運命の様に私とお前が再会したならば──」
深淵を思わせる漆黒の魔力が、解き放たれる。
「──また、楽しませて貰うぞ?」
闇。
そうとしか形容出来ない魔法が、俺の身体を呑み込んだ。
闇が身体を蝕む耐え難い痛みが走る。
悔しい、痛い、何故だ、痛い、畜生、死ぬ、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い───
痛みで意識が途切れそうになる中、最期に俺の脳内に愛しい人の顔が浮かび上がる。
───ミリアー……ナ……。
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