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確かに彼女の言う通り。
辞令がおりた時、話し合う必要なんて微塵も感じなかった。
俺は仕事が第一で。
やっと巡ってきたチャンス。
フランスでまた一からスタートさせたかった。
心機一転、真っ新な状態から。
勿論、彼女のことも含めて。
だから別れてから赴任したい、ってなんの躊躇いもなく条件反射のように思ってしまった。
酷いのかもしれない。
でも別れる以外の選択肢、俺にはなかった。
そう認めながら、彼女の言葉が発せられる前に、たたみかけるように言葉を続けた。
「話し合う前に、自分で納得いくまで考えたかったんだ。
その上で奈々子と話そうと思ってた。
赴任先はフランス。期間は未定。
来月には発つ。
まだお互いを理解できてると言えない今の段階で、言葉も通じない国へついてきて欲しいとも、いつ戻るか分からないのに日本で待ってて欲しい、とも俺は言えないんだ。
中途半端は性に合わないんだ。
だから……確かに奈々子の言うように、別れたい、といった方が的確なのかもしれない。」
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