2117人が本棚に入れています
本棚に追加
え?
一瞬考えてから、視線を傘を持つ手から上にあげた。
「この傘、よかったら使って。」
目の前にはそう言いながら私を見ている男の人がいた。
彼はなぜか傘を二つ持っていて。
「え。いいです。もうずぶ濡れですし、返せないから。」
そう断ると、「いいよ。返さなくても。」とにっこり微笑んで、私の手に傘を持たせると、そのまま駅の方向へ歩き出した。
「あの・・!」
急いで声をかけたけれど、私の声は激しく降りしきる雨に掻き消されたのか、彼は足を止めることなく立ち去ってしまった。
それが、私と大翔の出会いだった。
最初のコメントを投稿しよう!