第一話

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“Route”と表示されているサイトのTOPページを凝視している一人の女。 眼鏡を掛け、長い黒髪を一つに束ねたポニーテール。 「はぁ……」 重苦しい溜息を吐いては、マウスに置いた右手を動かそうと試みる。 「……はぁ、明日にしよう」 結局TOPページから動くことのなかった“Route”の文字は、無情にもパソコンのシャットダウンの前に姿を消した。 ことの発端は2日前に遡る。 「出張ホスト?」 友達のマリが一枚の紙を持ってきた。 ここは大学のカフェテリア。お茶でも飲もうと誘われて、リンは授業を終え早速やってきたのだ。 「そうそう。 映画いったりぃ、食事にいったりぃ、恋人気分をあじわえる、疑似彼氏、みたいなぁ」 そんなに髪の毛をくるくるしなくてもいいだろう。と、ツッコミたくなるくらい傷んだウェーブを指に巻き付けている。 友人のマリは目が大きい為、一見可愛い顔をしているが、化粧で荒れた肌を隠し、傷みきった明るい茶髪にウェーブをかけたセミロング、ほっそりと言うよりは、ガリガリとちょっと病的な印象を受ける身体つきをしている。 本人曰く、 “ダイエットちぅですぅ”だそうだ。 今時、そのしゃべり方はないだろうと思うが、はっきりと口に出しては言えないのはリンの悪いところだ。
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