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「あなたは喋り過ぎたんですって」
ゆっくりと歩み寄りながら、虚識は淡々と話す。
「あなたの声を聞いていたらね…特徴があったんですよ」
「特…徴、だと?」
急所を貫かれ、動く事も出来なくなった敵も続ける。
「あなた…私が攻撃を受けた時に、声が快感を帯びるんですよ」
「は、はは…なるほど、な」
「あなた…根っからのサディストですよね」
そう、虚識は姿の見えない相手の声を、察していたのだ。
声の調子の僅かな変化を、虚識は聞き逃さなかった。
「そんなあなたなら…最後には、私の顔を見に来ると思いましてね」
そう言って、倒れる敵の下にたどり着いた。
「ふん…俺が、未熟だった、か」
「まぁ…あなたが、人であった、ということですよ」
懐から取り出した拳銃で、頭部を撃ち抜く。
渇いた音の後、そこには死体が残った。
「はぁ…しんどいですねぇ」
ゆっくりと歩みながら、虚識は愚痴っていた。
「はぁ、軋識さんなら、この程度は…いや、私は軋識さんじゃありませんしね」
あの人と対等となるには…まだまだ遠い。
出来ないかもしれない。
だけど…。
「夢、じゃなくて目標にしておけば…いつか辿り着けるかもしれませんね」
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