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「いやー、私には理解出来ませんね」
刀を袖口から飛び出させる仕込みに戻し、明るい部屋をゆっくりと進む。
「仲間を…家族を駒の様になんて使おうとも思えませんよ」
ぶつぶつと呟きながら進む虚識。
その顔には、当初の余裕など無い。
追い詰められた表情であった。
「あぁ…こんなに追い込まれるとは、軋識さんは…大丈夫そうですね」
こんな時でも家族の心配。
外に居るであろう軋識の気配を感じ取り、安堵する虚識。
「ヤバいなぁ…肉体はともかく、精神的に…まいった」
家族と一緒の際には珍しく、虚識の心が折れかけていた。
狙撃、トラップ、連戦…それが虚識の心を折ろうとしていた。
腰を下ろそうとした、その時だった。
ピリリリリリ!
ピリリリリリ!
「携帯電話…今まで、鳴らなくて良かったな」
どうやら電話のようだ。
「はい…虚識です」
「虚識兄?今、どこなの?」
「おや…鍵織ちゃん…今は、帰宅途中ですかね」
電話をくれたのは、妹 零崎鍵織だった。
虚識の見つけた、家族だ。
「ふーん…大分疲れてるみたいだね、大丈夫?」
「大丈夫ですよ…心配してくれてありがとうね」
「うん…じゃあ、早く帰ってきてね?待ってるから」
そう言って電話は切れた。
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