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ーゴポッ。
大きな泡が、私の目の前を過ぎて行った。
ふよふよと忙しくなく細かく動き、上まで辿り着くと静かに弾く。
あぁ、私も泡になれたらいいのに。
微睡む視界の中で、黒い鎖が目に入る。
腕を動かせば、水の中をゆらゆらと鎖が重苦しく動く。
こんなもの。
いつから付けられたのか、もう覚えてもいない。
「麻酔が効いてるようだな」
大きな水槽越しに篭った声が耳に入る。
私を檻の中(ここ)に入れた張本人。大嫌いな女。
「主様…そろそろ」
「あぁ」
顎のラインまで切りそろえられた髪と、赤い口紅。
厚い壁越しに見ても彼女は毒々しい。
「そんな目で見るな。…自分の運命を恨め…人魚の姫」
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