面倒なプロローグ

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本来なら死んだ人間は輪廻の輪に導かれるのだが、神の失態で死なせてしまった人間は別の世界で第二の人生を、色をつけて歩ませるのが暗黙の了解となっている。 でなければ、この神は目の前の青年の事など放置しているだろう。しかし、仮にそうしたなら他の神から非難を受けることは予測するに容易い。神々の業界というのは世知辛い物なのである。 「仕方ないから、此方で適当なのを選んで転生させるね」 「あー、それでいいよ」 ごろりと寝返りをうち、首から上だけを神に向ける青年は気だるそうに返事をする。その様子からはやる気というものが感じられない。 「力の詳細と扱い方は知識に入れておくから。じゃ、良い人生を」 輪郭だけの左手を左右にゆらし、同時に青年のいる場所から光が湧き出る。 「まぶしっ……」 青年が何かを言い切る前に光は収束し、そして青年の姿は真っ白な世界から消失した。 「はぁ、久々に厄介な人間に合ったよ」 消えていった青年を頭の隅に残して、神は人形の輪郭を、真っ白な空間に溶かしていく。 数秒と経たずに、真っ白な空間には水平線のはるか先まで何もない無へと帰った。
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