面倒な転生初日

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転生者”西野 友希”が初めて踏んだ異世界の大地は”迷いの森”と呼ばれる、侵入者を彷徨わせる魔力を孕んだ森だった。 しかし、この森がそう呼ばれるようになったのはつい最近、半世紀ほど前からであった。 正しく説明しなおすなら『転生者”西野 友希”が初めて踏んだ異世界の大地は”迷いの森”と呼ばれるようになる森だった』が良いだろう。 彼がこの世界で生を受けたその後すぐに、彼は”異世界とかめんどくさい”と一言呟くとそのまま四肢を大地に放り投げた。そしてそのまま5世紀、”動くのも食うのも何もかもが面倒”という異常なまでに怠惰な理由で森の中で眠り続けた。 幸か不幸か、神が授けた力の中に”不老不死”があったため、2度寝3度寝と繰り返し5世紀もの時を生き続けられたのだった。そして、神から力の一端として多量の魔力を授けられた彼が、5世紀もの期間留まり続けた結果、近隣の村から”実りの森”と有り難がられてきた森は”迷いの森”と呼ばれる魔境へと変貌したのだった。 近隣の村の人間からすればとんだトバッチリである。 しかし、その事実を本人は知る由もない。それどころか彼はこの世界の常識を1から100まで全く持って知らないのだから、長時間強力な魔力を流すことで土地が呪いを帯びるなどとこの世界の摂理を知るはずが無かった。 だから悪くないと言うわけではないが、近隣の村人が半世紀前に魔境と化した森に不安を抱くのは当然で、その原因を除去してくれと”依頼”をするのも当然である。 「で、ここがその依頼の場所ですか」 森の入口に鉄の防具で身を固めた剣士が三人、その先頭に立つリーダー格の男が、森まで引率した村人に確認をとる。
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