プロローグ

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いつものように、すみやかに二次曲線を書いていた内職用のノートを、y=axの書いてある授業用のノートの下に潜りこませ、 何事もなかったかのように顔を上げると たまたま先生と目があってしまった。 「鳴宮!答えてみろ」 これはこれでラッキーだ。 発表するのが好きな訳ではないが 多くの人にアピールするのは こういう場合の方が都合がいい。 「え、うーん、、」 溜めて少し笑みを浮かべながら 「3、辺りで」 と、おどけた表情で答えた。 「おい、勘で答えるな!」 先生の顔は真っ赤になり、皺が浮き上がった。 一瞬、辺りが静まりかえったあと どっ、と塞き止めた水が溢れ出すように、笑い声が教室を埋めつくした。 今まで暑くて寝ていたやつも周りの笑い声で目を覚まし、俺がまた何かしでかしたのかと、つられてはははと笑い出した。 これでいい。 今回も成功だ。 勘違いしないでほしいが、 別に俺はクラスメイトを笑わせようと思ってやっている変なやつではない。 少し意味はにているかもしれないが、 先生も含めクラスの皆には俺が馬鹿に見えるように振る舞っている。
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