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キーンコーンカーンコーン
授業の終わりを知らせるチャイムが学校中に鳴り響いた。
チャイムの音を聞き、やっと家に帰られると、急に元気を取り戻したギャル達が、声のボリュームを上げていく。
そんな中、何蝉かは分からないが、負けじと鳴く蝉の声が窓の外から入ってくる。
教室は不協和音の大合唱だ。
「これで授業は終わりだが、最後に中間テストの返却をする。」
「えー」
クラスの大半が嫌な顔をした。
だが、生徒のブーイングをものともせず、教員はそのまま続けた。
「えー。平均は66.7だ。安藤から取りにこーい」
出席番号1の安藤から始まり
名前の順にテストが返されていく。
高校の勉強もほぼ終わっている俺は、もちろん、余裕で全問正答できるが
それをしてしまえば、
今まで時間をかけて積み上げてきた、鳴宮来人は馬鹿だというイメージが
簡単に崩れてしまう。
そのため
中2が間違えそうな問題は間違え、
合いそうな問題は答える。
「鳴宮!」
「はーい」
「はい、平均点。」
よしっ!
我ながら完璧な出来…
「ちょ、先生!俺の点数わかっちゃうじゃん」
と、勝利の雄叫びをあげてみた。
テストをもらい、自分の席に向かっていると、飯田が待ち構えていたかのように近付いてきた。
「鳴宮、お前66点だってな。俺の2点勝ち!紅ちゃん使っても駄目だったな、でガリガリ君1個な」
今回の中間テストで、負けた方がガリガリ君を奢るということになっていた。
「くっそー」
しかし、これも、俺が馬鹿に見えるようにするための演出。
「黒田すげぇ、数学も満点じゃん」
少し離れたところで、誰かが呟いた。黒田親衛隊の誰かだろう。
「黒田くーん」
「この問題教えてー」
黒田の周りには女子が数人集まっていた。エリートにしか興味のない女子達、俺は皮肉を込めて、黒田親衛隊と陰で呼んでいた。
目の下に大きな熊のある黒田は
満足そうな笑みを浮かべ、
得意げに解説をしていた。
テストで満点とったくらいで
自分が一番賢いと思っている
こいつには、上には上がいる
ということをわからせてやりたい
という気持ちが沸き上がってくる。
しかし、それはまだ出来ない。
ある目的があるから、、、
俺は決して目立ってはならないんだ 。
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