とある少年の独白

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  「ねえ、君って霊感とかあるの」  彼女はキョトンとして、歩くのをやめた。音楽室への移動の際で、めずらしく彼女が一人だったから、勇気を出して声をかけた。しばし訪れた沈黙に、僕の方こそ変なことを言ったなと、間違いを恥じる気持ちで赤面しながら質問を撤回しようとすると、 「えー、どうして?」と彼女は笑った。  僕はようやく動き始めた時間にホッとし、「ううん、ごめん、なんでもないよ」と笑って見せた。「へんなのー」と彼女は首を傾げ、僕らは連れ添って音楽室へと向かった。カップルー、だのと囃し立てる男共に「うっせ」と噛みついたりしながら、俯く彼女と離れて座った。僕らの間で会話らしい会話といえば、そのくらいだったような気がする。  どうして今さらそんなことを思い出したかと言うと、昨夜小学校時代の友人から、その女の子が死んだという連絡を受けたからだ。大学生になってから、二ヶ月が経っていた。  「自殺だって」と、電話の向こうの友人は言った。僕はなんと言うべきかわからず、「ほんとに?」と返した。思いがけず、声が震えた。「葬式どうする? 出る?」と訊かれ、僕は特に予定もなかったし、アパートを借りているのも地元からたった二駅の所だから、「行くよ」と答えた。そいつは仕事があるから行けないんだと残念そうな声で呟き、僕は代わりに手を合わせてくるよと励ますように言った。  
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