とある少年の独白

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   そうして出向いたお葬式で、僕は彼女の両親に会った。見たことがあるような気がしたが、気分的には初対面だった。彼女の両親は真っ赤に泣きはらした目で「よく来てくれたね」と言うと、またわんわん泣き崩れた。ビルから飛び降りてね、と彼女の母親が途切れ途切れに言った。悩みなんて聞いたこともないし、その日の朝だっていたって普通だったんだよ、なのにどうして、と彼女の父親が目頭を押さえた。二人は、立ち尽くす僕に、なにか心当たりはないかと尋ねた。無論、小学校卒業からこっち顔を見たこともなかったのだから、わかるはずはない。僕は「すみません」と首を振るので精一杯だった。  葬儀の帰り道、僕は久しぶりに煙草を吸った。よく晴れていて、少し肌寒かった。肺に煙が回って、頭がぼんやりした。その反面、脳の中心みたいなところがスウッと冷えて、ふいに僕に昔のことを思い出させた。彼女に「霊感とかあるの」と訊いたあの時のことだ。  二回しか煙を吐いていない煙草を携帯灰皿に入れ、僕は深い溜め息を吐いた。ニコチンとは違う苦さが胸を渦巻いて、こめかみのあたりがズキズキした。  よくよく考えてみると、彼女はあの時一度も、「見えないよ」とは言っていなかったのだ。  了.  
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