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「……私は、あんたのこと、ずっと好きだったのよ?」
「………知鶴?」
陽子は驚きの表情になり、その身を知鶴に預けたまま動けずいる。
「……浮気なんて、ろくでなしのすることよ。
いっそ、別れて私と一緒にいなさい?」
「……………。」
陽子にとって突然すぎるその知鶴の気持ちをぶつけられ、完全に思考は麻痺してしまっていた。
いつもの冗談か?と一方で考えるが、熱を帯びて耳にかかる吐息が、それが冗談ではないと物語っている。
靄がかった陽子の頭は次の瞬間、覚醒を余儀なくされる。
「………っ!…知鶴……」
「私は……あんたを泣かせたりしないわ!」
重なった唇を離し、知鶴は陽子をまっすぐ見据えて力強くそう言っていた。
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