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「………ばかみたい……。」
ポツリと呟いた言葉は彼女の鼓膜を穏やかに震わせる。
自嘲の言葉が内耳に届くと、瞳からは止め処なく涙が零れ……溢れ……。
けれど彼女は涙を拭うこともせず、尚も掠れた声を搾り出す様に続けた。
「…………なんで……なの…よ…………。」
続けて出てきた言葉はしかし、先程の自嘲のそれとは違う物だった。
「………なん…で?…………あさ…み……。」
涙でぼやけた瞳に蠍座の一等星を映しながら。
「………どうして…よ……。」
彼女の潤んだ瞳の中でゆらゆらと紅い星は揺れ続けた。
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