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「あなたたちに、弟か妹が出来るのよ」
あれは…忘れもしない、10歳のお正月の話だ。
共に医者をしている両親は、それぞれに忙しくて、家族全員集合できるお正月なんてのは滅多に無かった松代家。
その年は…きっと母なりに体調を考えたのであろう、久しぶりにみんなで揃ってお正月を迎えることが出来て、2歳下の弟…雅也と2人で、とても喜んだ事を覚えている。
さらに、兄弟が増えるとあっては尚更だ。
思いもかけぬ嬉しいビックニュースに、雅也と一緒に盛り上がった。
「にーちゃん♪にーちゃんは、弟と妹どっちがいい?」
「うーん…。僕は弟かなぁ」
「オレも弟がいい!!いっぱい遊んであげるんだぁ♪…女は…わかんねぇんだもん」
「なんだそりゃ!?」
「ねぇ、おかーさん!!弟にして?決めてきてよ!!」
「さぁ…どっちかしらね。どちらにしても…お兄ちゃん達、よろしく頼むわね」
「うん」
「まかせとけって!!」
小さな胸を叩いて、それを了承した俺達兄弟は、日々大きくなってくる母親のお腹を撫でては、中にいる『弟』に優しく語りかけ続けた。
そして……。
運命の日は、賑やかに訪れた。
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