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大きなお腹を抱えた母と、ずっと一緒に過ごせた…楽しかった夏休みも残り2日となったその日は、深夜から降り続く強い風雨が朝になっても止まず、友達とプールに遊びに行くつもりだった雅也は、膨れっ面のまま窓の外を睨みつけていた。
「雅也…そんなに怒っても、自然現象には敵わないのよ?」
「でもさぁ…。夏休みの最後に、絶対にプールに行きたかったんだもん…」
「仕方ないだろ?雨なんだもん。それよりさ、2学期の準備終わった?読書感想文が書きかけのまま机の上に出しっぱなしみたいだけど…」
俺の問いかけに顔を青く変えた弟は、慌てて子供部屋に戻り…「やべぇっ!!宿題終わってねぇ!!」……とか言うような叫びは聞かなかったことにした。
冷蔵庫から取り出した麦茶を、自分の分と母の分とを用意したグラスに注いで、手渡しながら聞いてみる。
「ねぇお母さん。赤ちゃん…そろそろ産まれるよね?」
「あら、ありがとう。そうね、もうすぐだと思うわよ。どうして?」
「うん…。夏休み中に産まれたんだったら、いっぱい遊んであげられたのにな…って」
「ありがとう…紀幸。これからいっぱい遊べるからね」
やさしい母の手で頭を撫でてもらい…これから産まれてくる『弟』に会えることが本当に楽しみで…。
グラスに入った麦茶を一気に飲み干すと、雅也の様子を見るために子供部屋へと戻った。
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