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「夢を…見たの」
3人で訪れた母の病室。
赤ちゃんが産まれたお祝いと、弟を産んでくれたお礼を母に言って…真っ白な部屋はとても賑やかになっていた。
「どんな夢!?」
ふと語りだした母の言葉に耳を傾ける。
「多分…一番苦しい時に見たのよ。紫色をした高い山から、2人の神様が降りていらして…赤ちゃんを抱いた私に言うの。『この子には大切な使命がある。こちらに来てはいけない。大丈夫…この子は強い。さぁ、早くお帰りなさい』って…」
「へぇ…」
「そうしたら身体が楽になって…目が覚めたのよ」
「じゃあさ、じゃあさ!!オレたちの弟は神様に守られてるってことなのか!?すっげぇなぁ、にーちゃんっ!!」
「ほんとだ!!凄いね!!」
感激しきりの兄弟を優しい瞳で見つめた両親は…顔を見合わせて微笑みあった。
「なるほど……神様が守ってくれてる赤ん坊……じゃあ…その夢の神様の住む山にあやかって…この子は『紫峰』と名付けよう」
「紫峰!!名前も何かスゲェ!!」
「雅也…興奮しすぎだよ」
仲良しな家族がみんなで楽しく笑いあって…その素敵な幸せを運んできてくれた小さな命。
生死をかけた大変な苦境をくぐり抜けて、松代家にやって来た可愛い弟。
何があっても…その『使命』を持つという末弟を、神様と一緒に守らなくてはならない!!
俺たち…紀幸と雅也は頷き合い、強い決意を胸に抱いた。
そうして…。
ここから、俺たち2人の『末弟溺愛』の歴史が幕を開けたのであった。
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