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「昨日はさ…親父さん、大変だったみたいだな」
ニュースで見たよ…なんて、さっきまでの伸びきった変顔から一転、急に真面目な顔になるから、紫峰はいつも紅音にはペースを乱されまくりだ。
たったひとつしか歳は変わらないのに、妙に彼が大人びてみえるのはそんな時だな…と紫峰は思う。
「昨夜のあの事故だろ?確かに一晩中忙しそうだったよ。だから、親父たちが帰ってきたのは今朝早くだったし…」
「え!?他に誰か居たの?」
さすが…なで肩だけど優等生。
微妙なニュアンスも聞き逃さない地獄耳!!
「あ…『たち』ね。ゆうべ、ひょっこり帰ってきたんだよ…兄貴が」
「雅兄さん?」
「…ハズレ」
「ええっ!!じゃあ、紀兄さんなのっ!?」
わぁ…いいなぁ♪前回会ったのって、いつだったかなぁ。久しぶりに紀兄さんに会いたいけど、きっと忙しいよねぇ……。
…なんて、ブツブツ隣で呟かれて。
そういえば、チイ兄や俺と違って『輝くばかりの優等生』だった兄貴は、紅さんの密かな憧れの人物のうちの一人に数えられていたはず。
紫峰はため息を漏らしながら、とうとう口を開かざるをえなくなった。
「紅さん………今夜は兄貴いるらしいから、ウチにメシ食いに来る?」
「「行くっ!!」」
「……翡翠……お前もか……」
「なんかワカンナイけど行くね♪わーい!!しーくんパパとゴハンゴハン♪」
「翡翠!?そこは俺とじゃないのかっ!?」
いつの間にか、とても仲良くなっていた父親と翡翠に若干の嫉妬を感じつつ…。
紫峰は、嬉しそうに微笑む2人に対して、しぶしぶと頷くしかなかったのであった。
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