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朝のキッチンから芳しい香りが家中に漂っている。
昨日、学校帰りに立ち寄ったお店で買い求めた珈琲を豆から挽いてドリップで落とし、最近オープンしたばかりのお気に入りのパン屋さんから買ってきた食パンをトースターでこんがりと焼いて…。
生クリームから作った新鮮なバターと、昨夜作っておいたブルーベリーのジャムをたっぷりと用意する。
ふんわりと焼き上げたスクランブルエッグにソーセージを添えて…あとはサラダを盛り付けたら完成だ。
昨夜は病院が大変なことになっていたから…疲れて帰ってくるであろう父親の為に、紫峰はせっせと朝御飯を用意していたのである。
紫峰の母親も医者であるが、発展途上国などの海外で活躍しているため、ほとんど日本には居ない。
だけど、病院のスタッフたちもたくさんいるから寂しいと思ったことはないし、普段からメールや電話を頻繁にやり取りしているので、元気にしているのはお互いに分かっているから心配もしていない。
家事に関しては、紫峰は嫌いではないので率先して行っているから……本人は普通の事だと思っているけれど、松代さんちの末っ子は、ご近所でも有名な『良い息子さん』で通っていた。
「さて♪そろそろ引き上げて来るだろうから…スープを温め直しておこうかな」
キッチンのコンロには野菜がたっぷりと入ったミネストローネのお鍋が置いてあって、それを温め直そうと手を伸ばした……その瞬間。
「…ぎ…ぎゃああああっ!!」
後ろからガバッと力強く抱きつかれて…紫峰は思わず大声をあげた。
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