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高校三年生のクリスマスイヴ。
受験を控えた僕たちに、
遊ぶ時間なんて全くなかった。
間近に迫った大学受験。
僕、金城時雨【かねしろしぐれ】が
入学したい学校は、神前悧羅学院大学医学部。
神前悧羅学院は、親友・早城飛翔【はやしろ ひしょう】が
幼い頃に通っていた母校の一つ。
飛翔にとっては、母校への出戻り入学。
だけど僕と由貴こと氷室由貴【ひむろゆき】にとっては違った。
神前悧羅は普通の学校とは違う、独特のシステムで運営されている。
神前の目玉は、学費が必要ないこと。
なんでも神前の卒業生からの寄付金で、授業料が免除になる仕組みらしく、
それ故に募集人数も決して多いとは言えないのだけど、
僕にとっては、中学時代からの目標の一つでもあった。
それは……ESSの大会の時に、
神前悧羅校の代表生として出てきたその人が凄かったから。
伊舎堂裕真【いさどう ゆうま】
三杉光輝【みすぎ こうき】
綾音一綺【あやね かずき】
向かうは上級生の先輩二人と最年少の僕。
僕自身も代表生としての誇りを持って出場したはずなのに
討論会が終わった頃には、神経はすり減ってしまってた。
そんな三人のうち一人が医学部に進学していたことを、
ESSに一緒に出場した先輩に知らされた。
あの場所に行けば、もう一度あの人と再会できるかもしれない。
微かなそんな期待もあって、何が何んでも合格を勝ち取りたかった。
在籍経験がある飛翔以外の僕と由貴は、
秋から入学試験が始まっていた。
本試験に受験する資格があるかどうか、
神前悧羅学院の生徒として相応しい特技を持っているか。
すでに受験勉強に必死に追われる僕とは違って、
弟の氷雨は、今日もクリスマスイヴのデート。
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