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*
何時になったら進路を決めんだよ。
そろそろ、母さんを安心してやれよ。
*
そんな風に思いながら勉強を続けた。
「時雨、ここの問題なんだけど」
由貴がテキストから視線をあげて、
質問しかけた頃、携帯電話がライトを点滅させながら
着信を告げた。
「時雨、携帯。
着信、入ってるよ」
由貴は床に置いてあった僕の携帯を掴んで、
手渡す。
由貴に手渡された携帯の液晶を見つめたまま、
僕は無言で固まった。
*
送信者:
金城氷雨(かねしろ ひさめ)
本文
あにき、
写真を米田(よねだ)の
おやじさんに
*
弟、氷雨からの意味不明のメール。
そしてそこに添付されているのは、
人の顔が映った小さな写真。
写真を保存して拡大してみるものの、
画質はいいとはいえなかった。
「時雨、何かあったの?」
由貴が問いかけてくるものの、
僕の脳内思考はフル回転。
ふと飛翔が合図を送って、
僕の携帯を覗き込んだ。
同じように飛翔もまた、顔を歪める。
「何?
飛翔、時雨なんのメール」
由貴の催促に答えるように飛翔が僕の手から携帯を抜き取ると
由貴へと画面を見せた。
暫くの沈黙の後、由貴が再び言葉を発する。
「時雨、これって?」
由貴の声を聴きながら、
僕の思考はフリーズしてしまったままだった。
「由貴、時雨を頼む。
氷雨を探してくる」
飛翔が部屋を出ていく気配を感じながらも、
僕は氷雨から送信されたメールの意味を考え続けていた。
ふと視線を窓際に移すと雪がちらつき始めてた。
そうだ……くだくだ悩んでいないで、
氷雨に連絡してみよう。
そう結論付けて、
携帯電話へと手を指し伸ばす。
掴んだ携帯のリダイヤルで氷雨の携帯を呼び出すものの、
電源が入っていないのか、アナウンスがむなしく流れる。
床に拳をぶつけた後、ふらつく体を支えながら
絨毯から立ち上がると、今度は家の電話から米田さんに連絡をしようと
リビングの方へと移動する。
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