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困りました。困り果てました。
異世界ーーとは一言で言うものの、その実かなーりそれは現実とはかけ離れたもので。
過去、幾人の偉人たちがその異世界について研究をしてきました。
あれ異世界とはどんなところなのか。
あれ異世界とは夢と希望に溢れているのか。
あれでっかい宝島だとかで、尻尾の生えた子どもが雲に乗ってそれを目指したと言います。
しかし、それは全て『失敗』しました。
異世界が存在する『根拠』は魔法と科学が発達して行く過程で判明したものの、そこに到達し得る『力』と『知恵』が無かったのです。
方法はあった、しかし、それを実行に移すだけの手段が確立していない。
少なくとも歴史上一人だって、異世界に到達した人はいなかったです。ーーある人を除いて。
魔王、ゼクス・アストロメリア様を除いて。
そう、ゼクス様がだけがーー異世界に到達したのです。
何と言う偉業。
何と言う反則(チート)。
これを魔学界に報告し、異世界へ行く方法を発表すれば、まず間違いなく科学と魔法は更なる高みへと成長するでしょう。
そうなれば、魔学会から資金もがっぽり……魔王軍の戦力拡大に繋がるはずです!
はずなのに!
何なんですかあの駄王は!
あんな立派な功績を、ドブに捨てるが如く放っていきやがりましたっ。
あーっ、勿体ない! 激しく勿体ないっ!
方法も手段も、情報はなし。
異世界へ転移するときに使っただろう魔法陣も、その役目を終えてさっさと消えてしまいました。
絶望ですね!
……少々乱れましたが、兎も角、要は私たちにはゼクス様が使用した異世界へ転移する魔法の手がかりも皆無なのです。
それはつまり、同じく異世界に行ってしまわれたゼクス様を追う手段も……同じく皆無という訳で。
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