≪十壱≫

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「こちらに来い。」 「…失礼ながら、出来かねます。」 「何故。」 「私が貴方の味方ではないからです。」 「…それでも腰に刀を置くのなら、相応の覚悟をしておけ。この世はそんなに甘くない。まして、お前のような若僧が儂の敵になろうとはな…。」 突然、狼子のいる部屋の襖が勢いよく開いた。 そこには酔っているらしい芹沢の姿があり、狼子は大きくため息をつく。 「無駄ですよ。いくら貴方が強かろうと、酔っ払いに刀を向けるような真似はしたくない。」 「なら、貴様が死ぬだけのこと。」 その声と同時に芹沢の刀が迫る。 しかし、狼子は避けることなどしなかった。 「…何故、避けない?」 芹沢の刀は刃が肩に当たる寸前で止まっていた。 狼子が止めた訳ではない。 芹沢が斬らなかったのだ。 「目の前の男は、私を斬るつもりなど無さそうでしたので。」 そんな芹沢に、狼子は冷めたように告げた。 .
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