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「こちらに来い。」
「…失礼ながら、出来かねます。」
「何故。」
「私が貴方の味方ではないからです。」
「…それでも腰に刀を置くのなら、相応の覚悟をしておけ。この世はそんなに甘くない。まして、お前のような若僧が儂の敵になろうとはな…。」
突然、狼子のいる部屋の襖が勢いよく開いた。
そこには酔っているらしい芹沢の姿があり、狼子は大きくため息をつく。
「無駄ですよ。いくら貴方が強かろうと、酔っ払いに刀を向けるような真似はしたくない。」
「なら、貴様が死ぬだけのこと。」
その声と同時に芹沢の刀が迫る。
しかし、狼子は避けることなどしなかった。
「…何故、避けない?」
芹沢の刀は刃が肩に当たる寸前で止まっていた。
狼子が止めた訳ではない。
芹沢が斬らなかったのだ。
「目の前の男は、私を斬るつもりなど無さそうでしたので。」
そんな芹沢に、狼子は冷めたように告げた。
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