77人が本棚に入れています
本棚に追加
/116ページ
「……朔さん、お疲れ様です。」
「…うん。ろんちゃんも、お疲れにゃ。」
話も終わり、屯所に帰っていく土方を見送って、狼子は朔の頭を撫でた。
眠そうに目を擦り、うつらうつらとしている朔に、狼子は笑う。
「もう眠いんですか?夜はまだまだこれからだと言うのに。」
「……にゃぁ。」
耳元で囁いてやれば、朔は狼子に身体を預けるようにしてもたれかかってきた。
腕の中で眠ってしまった朔を座敷に寝かし、隣の声に耳を澄ました。
どうやら芹沢の他は酔い潰れてしまったようだ。
隣の部屋には、芸子が一人と芹沢だけ。
部屋を移って情事に及んでも良い頃合いなのに、芹沢は一向にそんな態度は見せない。
「新見がどこにいるのか、お前は知っているか。」
そんな時、芹沢の言葉がやけに真剣味を帯びた。
芸子に聞いているのか。
それにしては声が大きくないか。
まさか。
「お前だ。その壁の向こうで聞き耳を立てている若僧。」
狼子は小さく一笑した。
さすが、あの狼共の頂点に立つ人間。
何かを感じ取る能力には長けているのか。
「………存じ上げません。」
狼子は壁を挟んだ状態のまま、返答した。
.
最初のコメントを投稿しよう!