≪十壱≫

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「……朔さん、お疲れ様です。」 「…うん。ろんちゃんも、お疲れにゃ。」 話も終わり、屯所に帰っていく土方を見送って、狼子は朔の頭を撫でた。 眠そうに目を擦り、うつらうつらとしている朔に、狼子は笑う。 「もう眠いんですか?夜はまだまだこれからだと言うのに。」 「……にゃぁ。」 耳元で囁いてやれば、朔は狼子に身体を預けるようにしてもたれかかってきた。 腕の中で眠ってしまった朔を座敷に寝かし、隣の声に耳を澄ました。 どうやら芹沢の他は酔い潰れてしまったようだ。 隣の部屋には、芸子が一人と芹沢だけ。 部屋を移って情事に及んでも良い頃合いなのに、芹沢は一向にそんな態度は見せない。 「新見がどこにいるのか、お前は知っているか。」 そんな時、芹沢の言葉がやけに真剣味を帯びた。 芸子に聞いているのか。 それにしては声が大きくないか。 まさか。 「お前だ。その壁の向こうで聞き耳を立てている若僧。」 狼子は小さく一笑した。 さすが、あの狼共の頂点に立つ人間。 何かを感じ取る能力には長けているのか。 「………存じ上げません。」 狼子は壁を挟んだ状態のまま、返答した。 .
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