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「……ほぅ。」
「今の返答に何か御不満でもおありですか。」
狼子は構わず聞き、眼前の芹沢を見据える。
たしかに芹沢の刀の軌道は自分を狙っていた。
だが、その刀には覇気がなく、斬る気などさらさらないような、そんな印象を受けた。
だから、狼子は恐れない。
「……不満はないがな、若僧。一つだけ聞かせろ。…新見は、どこにいる。」
「そのことを貴方に伝えて、何になります。所詮は彼も一人の人間。貴方の望むように動いてくれる訳ではありませんよ。」
「……そうさな。奴は頭が良い。俺を利用しているだけかもしれん。だが、だがな。」
「だが、貴方はお優しい方だから、共に過ごしてきた仲間を冷徹に排除することなどできない。…違いますか?」
「違う。儂はしっかりとしたけじめを付けさせたいだけだ。」
「……新見錦なら、馴染みの芸子と共に過ごしていますよ。」
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