≪十壱≫

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「……ほぅ。」 「今の返答に何か御不満でもおありですか。」 狼子は構わず聞き、眼前の芹沢を見据える。 たしかに芹沢の刀の軌道は自分を狙っていた。 だが、その刀には覇気がなく、斬る気などさらさらないような、そんな印象を受けた。 だから、狼子は恐れない。 「……不満はないがな、若僧。一つだけ聞かせろ。…新見は、どこにいる。」 「そのことを貴方に伝えて、何になります。所詮は彼も一人の人間。貴方の望むように動いてくれる訳ではありませんよ。」 「……そうさな。奴は頭が良い。俺を利用しているだけかもしれん。だが、だがな。」 「だが、貴方はお優しい方だから、共に過ごしてきた仲間を冷徹に排除することなどできない。…違いますか?」 「違う。儂はしっかりとしたけじめを付けさせたいだけだ。」 「……新見錦なら、馴染みの芸子と共に過ごしていますよ。」
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