頭領

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一人の中年の武士が困っていた。 もう日がとっぷり暮れて、旅路は真っ暗である。 路銀もそこをつきかけていた。 「これは野宿しかないか……。しかしこの辺りは…」 そう一人でつぶやくと、武士は辺りを見渡した。 (ここは一体どこなのであろうか。) 武士は背負っている荷物から絵地図を取り出すとパラリと広げた。 わずかな灯りは月の光である。 (馬追国の神吹山周辺であることは間違えなさそうではあるのだが…) 気骨のありそうな顔の眉間に皺が寄る。 そして一言困った、というぽつりとこぼすと刀を鞘ごと腰から抜き取り、どさりと道端の草が繁った所に寝転んだ。 草の潰れた独特の匂いが鼻をつき、再び武士は眉間に皺を寄せる。 そのまま武士は目を瞑り、眠ろうとした時だった。 ガサガサ 草を掻き分ける音が僅かにする。 武士は刀の柄を握った。
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