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娘はあわてて答えた。
「失礼ですが、その地図は古きものかと・・・」
「ふむ。」
確かに春戸が持っている地図は新しくはない。この時代の地図というものはほとんどが古くていい加減なものである。
娘は続けた。
「私が生まれる十余年ほど前に、突然神吹山が崩れたのです。そのとき麓の村々はことごとく土砂に飲み込まれたと聞いております。」
「あぁ、あれか!」
春戸は聞き覚えがあった。
まだ春戸が丸内家の若き筆頭家老としてその辣腕を振るっているとき、かの有名な神吹山が大きく崩れたという話を聞いたことがあったのだ。
「ふむ、私も以前にその話は聞いておりましたが・・・そうですか。村が飲まれましたか。いや、当たり前のことかも知れぬな。」
「お侍様、もし腹の足しにでもなれば・・」
そういって娘は持っている竹編みのかごから何かを取り出した。
「これは?」
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