水柱

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肩や頭に被った葉っぱを払い落とす男達。 その顔を、明るい月の光が照らし出す。 男達から大将と呼ばれた男の顔は、明らかに老人であった。 肌に潤いはなく、鼻は高いが目元の皺も深い。 白くなった眉毛は長く、髪は白髪交じりで後ろで縛ってある。 老人大将は草原に四つん這いになり、耳を地につけた。 「いまから神吹山におわす神さんの呼吸を聞くゆえ静かにしておれ。」 老人の一言で、男達は痩せこけた口元をきゅっと一文字にした。 強い風が竹藪を揺らし、雲を流す。 そして月が厚い雲に覆われ、辺りがにわかに暗くなった時、老人はヌッと立ち上がった。 「神さんはあそこだな。」 老人の指す方向は、ポツリポツリと草原に生えている巨木の中で一際巨大な木があった。 しめ縄が巻かれていることから恐らく神木であろう。神社は見当たらない。 「た、大将。本気ですけ?」 男の一人が尋ねた。
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