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「本気も本気よ、わしゃあ聞こえたんだわ。おい、ゴンロク。」
老人に呼ばれて一人の男が前に出た。
「へい、あっしですか。」
ゴンロクと呼ばれた男は、この集団の中で一番体格が立派である。ゴンロク以外は皆もやしのようだ。
「ゴンロクよ、あの神木まがいをたたっ斬れや。」
ゴンロクの目は一瞬怯んだが、息をフゥと吐き出すと、神木の方へと少しずつ歩み寄っていく。
肩から下げていたいかにも重そうな布の袋をゴトリと下ろすと、中からは成人した女性の背丈程に大きい巨大な斧が姿を見せた。
おそらく戦闘に用いられる戦斧であろう。
鎧ともども身体もひしゃげそうだ。
ゴンロクはその巨大な斧をぐっと握りしめたかと思うと、身体をねじって思い切り神木に叩きつけた。
ボクッという音がすると共に木に斧が深く食い込む。
しかし木の太さを考えると、とても直ぐには倒せるようには思えなかった。
そのまま斧が食い込む単調な音は、山にこだまし続けた。
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