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護送車から降りて、辺りを見回した僕は、目前の建物を見上げて愕然とした。
黒ずんだ高い灰色の壁、同色の巨大な鉄の正門を挟んで立つ、先端の尖った二つの監視塔がある場所は、ただ一つ。
絶望の城、灰色の煉獄……耳にした渾名なら幾らでもある。でもこの施設を表す一番の通り名が僕の頭をよぎった。
――“収容所”じゃないか。
「“ラーゲリ”直送だぜ。お前よっぽどえらい事やらかしちまったんだなあ?」
僕の肩を軽く押して歩くよう促す警官が、気の毒そうに笑った。
僕の国には、犯罪者を送る施設が大まかに分けて二つある。
窃盗犯などを収監する刑務所と、放火や強盗殺人のような重罪を犯した人間しか入れない刑務所――通称“収容所”、つまり、ここだ。
ここに来るということは、後々極刑で裁かれるという事を暗に意味する。
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