13人が本棚に入れています
本棚に追加
自分と同じように丘に座り込み、こちらを見ていた。
「‥‥」
状況は把握できていないが、この目の前の男が自分を助けたのか。
それしか、考えられない。
「救ってやったのに礼もなしか…」
低い声。
魅夜美に言っているようだ。
魅夜美は答えず、髪の毛の隙間から男を睨んだ。
男も魅夜美が威嚇しているのを理解したのか、同じように強く睨みつけてきた。
「ーー死ぬなら、生きたくても生きれない奴らに、その健康な体を提供してからにしろ」
男は素早く立ち上がり、ブッと唾を吐いて魅夜美を見下ろした。
「‥‥」
魅夜美も震える体に力を込めて、すっと立ち上がる。
「ははっ…震えてるじゃないか」
男は馬鹿にしたように、鼻で笑った。
魅夜美は顔にかかった髪の毛を拭い、正面から男にガンを飛ばした。
「のうのうと…」
小さな声から大声になっていく。
「のうのうと生きている人達に苦しめられて…」
魅夜美はぎゅっと拳に力を込める。
「ーー死ぬ程苦しめられているのに、どうして、そんな人達にこの大事な体を渡さなくてはならないの!?」
「‥‥」
男が言葉を失った、その一瞬に、
魅夜美は男の肩に思いきりぶち当たって、走り去っていった。
最初のコメントを投稿しよう!