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その日の夕方、魅夜美は足どり重く、宿場へと帰っていった。
そこは、繁華街の裏側。
ごちゃごちゃとゴミにまみれた汚い街。
通りも狭く、荷馬車も通らない。
道も悪く、凸凹していた。
子供はいない。老人も。
「魅夜美さん‥」
後ろから声をかけられ、魅夜美は覇気のない声で返事し振り返った。
「‥‥はい?」
「まぁ…どうなさったの?
顔色が真っ青でしてよ?
今日はお休みの日でしたよね?
なにか悪いことでも…?」
香水を鼻が痛くなる程つけている、その女は、魅夜美の仕事場の仲間‥つまり同僚である。
「雪子(ユキコ)さん…」
魅夜美の乱れた姿に、雪子は目を凝らして見つめた。
「本当になにかあったの?」
「‥いいえ、なにも。
少し疲れたから、部屋に戻ります」
魅夜美は小さな声でそう言うと、
すぐに宿場の中に入っていった。
そこは、繁華街の裏側…
春を売る女たちの休む場所…
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