†死にたい理由†

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「あ…すみません。 泥棒などではありません」 高価なスーツを身に纏った二階堂であった。 二階堂はしゃがんでいたので、 少しだけスーツが汚れていた。 「こっ…ここで、なにをなさっているのですか…!」 幸は驚き慌てふためいて、 とにかく、持っていた武器…ホウキを後ろに隠した。 二階堂は二人の前に近づき、魅夜美の目の前に立った。 「魅夜美‥待っていました。 急なんですが、今日いいですか?」 魅夜美の右手を両手で包み込む。 この暑さのせいで、だいぶ汗だくになったいた。 「二階堂さま…」 魅夜美は困った表情をしたが、 邪険に断ることもできない。 こんな宿場までやって来る客がいるとは。 まだ日も高い。 「頼みます。 次まで待っていられないんです!」 「でも‥ まだ、お店は開いてないのです。 それに‥今宵は既に別のご予約のお客様がいらして…」 慎重に言葉を選び、魅夜美は二階堂を説得しようとする。 だが、二階堂はそう簡単には引き下がらなかった。 強く魅夜美の手を握る。 「それは嫌だ。 魅夜美は私の専属でいてほしい!」 「そんなこと、おっしゃられても… 私に権利はないのです。 店主が全て管理しておりますので…」 笑顔でかわそうとするが、 二階堂があまりに真剣で怖い形相をしているので、顔がひきつってしまう。 幸は危険を感じ、すぐに宿場の中に入っていった。 「そうだ…! では、今からどこかの宿を借りて、 そこで開店の時間まで二人で過ごしましょう!」 二階堂はそう言うと、強引に魅夜美と腕を組み、庭から外へと連れ出そうとした。 「二階堂さま…」 魅夜美は『気持ち悪い!!放せ!』と腕を振り払いたいのを、懸命に堪えて我慢した。
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