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グイグイと腕を引き、二階堂は魅夜美をその庭から外へと連れ出そうとした。
「二階堂さま、いけません…
叱られてしまいます…!」
「平気ですよ!
時間までには必ず戻りますから!」
二階堂は目が血走っている。
魅夜美は絶対に拒否するつもりだが、
二階堂も決して引き下がろうとはしないようだった。
二人の押し問答が始まる。
「いいえ…!
店主に叱られます…!」
「開店前に、何をしようと勝手ではありませんか!?プライベートなんですから!
店主は口出し出来ませんよ!」
さすがの魅夜美でも笑顔がなくなり、
困惑というより、軽蔑の眼差しで二階堂を見ていた。
元々、土が見え隠れした荒れた芝生ではあるが、二人の容赦ない力で、芝生が削れてゆく。
バタバタバタバタ…!!
すると、宿場の玄関から店主を呼んできた幸が息を切らして登場した。
店主も慌てた表情をしていたが、
二階堂の前に出ると、営業用の顔を作る。
「これはこれは‥二階堂さま!
こんなにお早い時間にどうなさったのでありますか?」
店主は魅夜美との間に割って入り、
頭を低めて話始めた。
二階堂はチッとみえないように舌打ちして、偉そうな態度を見せる。
「ーーーーー今夜、
どうしても魅夜美を指名したいのです。お願いできますね?
私はこちらの会員なのですから、それくらいしていただいて当然ですよね?」
強気な態度。
しかし、店主はわざとらしいくらいに大袈裟なリアクションをする。
「ああぁぁ…!!
大変、残念ながら、魅夜美には他のお客様との御約束がありまして…!!!!」
「そこを何とかするのが、店主の仕事でしょう!」
「ああぁぁ…!!
申し訳ございません!!
二階堂さまには、魅夜美もとてもお世話になっていますので、そうしたいのが本音ではあるのですが、そのお客様との御約束はお断りできないものでして…!!」
何を言っても、マニュアル通りの返事しかしなさそうな店主に、二階堂はキレた。
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