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翌日の正午には、魅夜美は目が覚めた。
自分の与えられた部屋で、ゆっくりと時間を過ごす。
畳み12畳の広い部屋だった。
仕切りを立てて、部屋を二つに区切ってある。
出入り口から遠い方に布団を敷き、
出入り口から近い方を鏡台や着物を並べた。
部屋にあるものはそれだけだ。
窓を全開にし、外を眺めていた。
もし、鳥だったら‥
もし、蝶だったら‥
そんなこと考えない。
ここから出ることは叶わない夢だ。
『もしも』など、考えたところでバカらしくて虚しくなるだけだ。
だから、考えない。
ここから出られるとしたら…
それは死を意味する。
逃げ出せば、確実に連れ戻されて殺される。
そうでなければ、死ぬまでここにいなければならない。
そして最後の手段は、自ら死ぬか、だ。
「‥‥」
空は眺めない主義だ。
空にはなにも期待できるものがない。
見ているのは、下。
人通りを見ていた。
今日の人並みを。
現実を見ていた。
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