11.別れの時

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「鈴木さん…。」 高橋先生は鞄をドサッと地面に落とすと私を抱きしめた。 再び先生の温もりが私のもとに戻ってきた。 先生の白いシャツに何度も何度も顔をうめた。 「…先生っ!…高橋先生っ…!」 先生の長い指が私の髪を優しく撫でる。 「先生…、私今まで以上に仕事を頑張って立派な看護師になりますっ!! それから…先生の隣に並んでもおかしくない素敵な女性になりますからっ…!」 先生はゆっくりと私を放すと、微笑んだ。 「今でも十分に可愛いけど…そうだね。楽しみにしてるよ、杏奈。」 私の胸はきゅっと苦しくなる。 『杏奈』… 先生が始めて私を名前で呼んでくれた瞬間だった。
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