11.別れの時

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「それじゃ、行ってきます。」 先生が一礼をして歩いていく。 この大学病院を後にして…。 『…い…!高橋せんせ~いっ!!』 ふと誰かが先生を呼ぶ声がして当たりを見渡す。 でも私の周りにいるスタッフじゃないみたいだ。 今度ははっきりと聞こえてきた。 『高橋先生~っ!上じゃ~!!』 「う、上…?」 高橋先生にも聞こえたらしく途中で慌てて振り返った。 なんと、そこには病院の窓から沢山の患者さんが顔を覗かせ手を振っている。 そして、誰かの合図で横断幕が掲げられた。 《高橋先生ありがとう!!》 大きくそう書かれてある横断幕からは患者さんからの熱いメッセージが伝わってきた。 「ちょっと誰があんなの用意したの!?」 先輩看護師は驚きを隠せないようだ。 もちろん私もこんな仕掛けがあるとは知らなくて。
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