ふたりのくに

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   そんな俺がしぃに逢ったのは、偶然にも程があるように思えるが、通勤時の電車の中だった。  あれは確か、日本全国でその年初めての猛暑日の観測があった日のことだ。  やけに蝉の鳴き声がけたたましく、たった数日の命を懸命に生きようとしている姿に、憤りを感じながら、いつも通り俺は駅の人混みに紛れていった。  そして電車に乗った時に、普段とは比べ物にならない嫌悪感を感じた。  通勤ラッシュ時の電車内は馬鹿みたいに人口密度が高く、蒸し暑いというのに、それに加えてこの異常気象だ。  ただでさえ暑さに弱い俺にとっては、真夏の電車内は地獄でしかなかった。  しかもその日は運悪く、派手な化粧で着飾った俺の女が隣で、甘ったるい香水の臭いがやけに鼻についた。  あの女性独特の甘い臭いが俺はどうにも苦手で、それがいつもの吐き気を助長させる原因になった。   ――――あと一駅で降りられる、この地獄から解放される、そう思った時だった。  その一駅前の駅で、大量の人が乗り込み、電車の中は更に人口密度を増した。  それだけではなく、隣の女が俺に密着する形になり、香水の臭いがダイレクトに俺の嗅覚を麻痺させる。       
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