ふたりのくに

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   ガタンゴトン、ガタンゴトン。  社会人になって数年経つが、通勤ラッシュの電車の混み具合には今でもなかなか慣れない。  最初の頃はこの窮屈な空間の何処に身を置けばいいのかわからず、あまりの居心地の悪さに、出勤前、駅のトイレでそのまま吐いてしまったこともあった。  昔から、自分の置かれている立ち位置や、自分の居場所がわからなくなると、そのようなパニックに陥ってしまうことがあった。  神経質すぎるというか、ここまで来るとちょっとした適応障害なのかもしれない。  いつも同じ人、同じ人数がその電車に乗っているなら、不安になることはないのだが、そんなことがあるはずもなく。  違う人、違う人数、そしてあのひとつの箱みたいな乗り物に詰め込まれ、知らない人とぎゅうぎゅうにおしくらまんじゅうをするのが、毎朝苦痛で苦痛でたまらなかった。  こんな恥ずかしい部分を誰かに晒すわけにもいかず、病院へ行く勇気も出ず、そのまま何ヶ月間か過ぎたが、結局それは治ることはなかった。  
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